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ヘッジファンドの特徴と運用戦略について

ヘッジファンドとは、Hedge(=回避する)Fund(=基金)という意味です。

ヘッジファンドはふつうの証券会社や銀行では取り扱いません。
普通の投資信託は、証券会社などが幅広く一般の個人の投資家から『公募』という形で資金を集めるのに対し、ヘッジファンドはプロの機関投資家や富裕層などから、プライベートに資金を集めて運用する『私募』という形をとります。

ヘッジファンドを購入する方法

・個人的な紹介で購入
・証券会社から直接購入
・投資顧問会社が富裕層限定のサービスとして紹介
・プライベートバンクを通じて購入
・IFAを通じて証券会社から購入

投資信託とヘッジファンドの違い

一番の違いは、投資金額の大きさです。一般的な投資信託は、1万円や10万円単位、100円単位でも買い付けが可能な場合もありますが、ヘッジファンドは最低で1億円ということも多くあります。証券会社により、小口化して購入ができる場合もありますが、それでも1000万円といった単位になります。

グローバル化とクロスマーケット

ヘッジファンドでは、世界中を舞台に投資活動が行われています。株式市場だけでなく、為替市場、債券市場、コモディティ・・・あらゆるマーケットを投資対象としています。
現物取引、先物取引、オプション、証券化商品(※1)、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)といったオルタナティブ商品、クレジット関連商品、アルゴリズム取引(※2)も投資対象です。(=クロスマーケット)

※1 原資産の譲渡を主な目的として当該原資産から発生するキャッシュフローを裏付けとして発行され、又は実質的に原資産のリスクの移転を主な目的として当該原資産のリスクを参照して発行される証券のこと。(日本証券業協会HPより)

※2 コンピュータのシステムが、市場に応じて自動的に株式売買注文のタイミングや数量を決めて注文を繰り返す取引のこと。

ヘッジファンドの目的は『安定運用』。リスクを最小限にして、最大のリターンを取りに行くこと

相場全体が大きな上昇トレンドであっても、逆に大きな下降トレンドでも、一定の利益を確保するヘッジファンドが多くあります。
あくまでも、リスクを回避することが目的です。

 

ヘッジファンドの仕組み

ヘッジファンドは、上げ相場でも下げ相場でも利益を出そうとする仕組みをつくっています。
一般的な投資信託の運用はほとんど『買い』中心の運用です。上げ相場の場合は利益が出ますが、下げ相場では運用益が出なくなってしまいます。
それに対してヘッジファンドの大半は、株価が下落しそうなときは『空売り』を行います。先に売って、後で買い戻す戦略を日常的に行っています。

ヘッジファンドのストラテジー(戦略)

ヘッジファンドの戦略は大きく3つに分類されます。

①裁定取引型/非ディレクショナル型投資戦略
②ディレクショナル(相場志向)型投資戦略
③運用特化型投資戦略

この中にいろいろな戦略があり、それぞれの戦略を組み合わせたりしながら運用しています。

 

①裁定取引型/非ディレクショナル型投資戦略

 

■レラティブ・バリュー戦略

関連する銘柄の小さな価格差に注目し、買い・売りのポジションを取ります。
例えば、半導体に関連した2つの銘柄に注目したとき、それぞれの銘柄は比較的近い動きで変動しますが、時にはいずれかが割高・割安になることがあります。

そのときに割高になっている銘柄を売り持ち、割安になっている銘柄を買い持ちし、これらの価格が平均に戻るときに利益を狙います。レラティブ・バリュー戦略は、低リスクで利益を出すことを目指しています。

■マーケット・ニュートラル戦略

マーケット(市場)に対してニュートラル(中立)となるように運用する戦略です。
例えば、同じ半導体関連の2つの銘柄で、A社は割高、B社は割安だと判断した場合。通常の投資信託ではB社の株に投資するのみの運用となりますが、マーケット・ニュートラル戦略では、割高になっているA社の株を空売りしておきます。

こうすると、市場全体が下がったときにはB社の株価は下落しますが、A社は割高な分さらに下落します。
逆に、市場全体が上がったときには、B社の株価は大きく値上がりし、割高だったA社は、B社よりも少ない上昇となります。

そして、市場全体が下落しても上昇しても、一定の収益を見込めます。

 

■転換社債アービトラージ

債券価格と株式価値の乖離が生じた場合に利益が発生する取引です。
割安な転換社債を買い、同一発行体の現物株を売却することにより、この転換価格と現物株の価格差が利益となります。

 

■債券アービトラージ

国債、金利スワップ、金利オプションなどの金利商品の取引に使われます。
価格付けの歪み(割安・割高なプライシング)を発見し、割安な金利商品を購入し、関係のある割高な金利商品をショートします。

ロングとショートのポジションを組み合わせることによって、ミスプライシングの解消にともなう利益を狙います。

 

②ディレクショナル(相場志向)型投資戦略

値上りが見込まれる資産の買いポションと、値下がりが見込まれる資産の売りポジションの両方のポションをとり、市場の動きを利用して利益を出すことを目指します。

■ロング・ショート戦略

買う(=ロング)と売る(=ショート)を組み合わせた運用を『ロング・ショート』といいます。
株式市場などで、値上がりが期待できる割安な銘柄を買い(ロング)、値下がりしそうな割高な銘柄を空売り(ショート)する戦略です。

上げ相場でも下げ相場でも、市場の動きに左右されにくいため、下げ相場でも利益を出す可能性はありますが、上げ相場でもロングをショートで相殺してしまうため、利益が小さいこともあります。

・ファンダメンタル・アプローチ
企業の業績や将来性をもとに株価が割安か、割高かを判断します。

・カスティカル・アプローチ
統計的なデータに基づき売買を行う、システマティックな戦略です。

 

■グローバル・マクロ戦略

世界中のあらゆる市場に投資して、大きなレバレッジをかけて利益を得ることを目指します。世界で最初につくられたヘッジファンドも、グローバル・マクロ戦略だったといわれています。
英国ポンドを売り崩してイングランド銀行(英国の中央銀行)に勝ったといわれた『ジョージ・ソロス』のソロスファンドをはじめ、有名なファンドの多くがグローバル・マクロ戦略をとっています。

通貨、株式、債券、商品先物・・・あらゆるジャンルの金融商品が投資対象です。
ファンドマネージャーの裁量により大きく結果が変わります。

2022年10月よりシェアティブでもお取り扱いが開始したヘッジファンドは、この戦略です。

新ヘッジファンドの取り扱いを開始しました

 

■マネージド・フューチャーズ戦略

商品(コモディティ)、金利、為替、株式など流動性の高い『上場先物』銘柄を投資対象に、テクニカル指標、定量分析を駆使します。トレンドフォローを基本にシステム売買を行う戦略でもあり、大きなレバレッジをかけて、わずかな値動きを収益に変えることを狙う戦略です。

コンピューターの『アルゴリズム』を利用した運用のため、超高速の売買が可能です。
CTA(コモディティ・トレーディング・アドバイザーズ)とも呼ばれます。

 

③運用特化型投資戦略

 

■エマージング・マーケット戦略

新興国市場の通貨、債券や株式に投資します。

 

■イベント・ドリブン戦略

企業の合併・買収、株価指数の変更など、重要な出来事が起きた時に生まれる収益を得る投資戦略です。
企業のM&A、新規上場、経営破綻、株価指数採用銘柄の変更といった『イベント』に注目します。

・買収アービトラージ/M&Aアービトラージ戦略
買収の過程では一般的に、買収される側の株式は一時的に上昇し、逆に買収する側の株式は下がる傾向にあります。
TOB(株式公開買付け)が終了すると、それぞれの株価は平常時の価格に戻ります。そのタイミングで利益を狙います。
買収が実現すれば大きな収益になりますが、買収計画がなくなってしまうと大きな損失になります。

・ディストレスト戦略
経営危機に陥っている企業に投資し、企業の経営が回復して利益を得たり、破綻手続き中の企業の高金利債券や銀行ローンなどをターゲットに利益を得ます。

・マルチストラテジー
企業のイベントをメインに、手法に制限なく投資する戦略です。

 

ヘッジファンドは以上のような戦略を、様々な市場で行うことで、絶対的な利益を目指しています。
銘柄によりそれぞれの運用戦略の特徴がありますので、よく確認しましょう。
ご不明な点はぜひご相談ください。

 

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<参考文献>

ヘッジファンド×海外不動産で組む鉄壁の資産防衛ポートフォリオ 植頭隆道/著(幻冬舎)
富裕層のためのヘッジファンド投資入門 髙岡壮一郎/著(ダイヤモンド社)
証券アナリストジャーナル 2003 年 4 月号(日本証券アナリスト協会)

 

 

【ご注意事項】
リスクを含む商品であり、運用損益は市況環境等により変動しますので投資元本を割り込むことがあります。
元本の保証はありません

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